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ペパーミント Peppermint
Mentha x piperita

科名
 シソ科

植生と原産地
 ペパーミントは南ヨーロッパ原産ですが、19世紀初頭にアメリカ大陸に持ち込まれました。1 アメリカ合衆国がペパーミントの最大生産国です。1,2 また、アルゼンチン、ブラジル、フランス、イタリア、モロッコ、ブルガリア、オランダ、スペイン、ドイツ、イギリス、インド、オーストラリアでも栽培されています。1
 ペパーミントは多年草で、背丈30〜100cmになります。M. piperita は20の変種と交配種を含む属に属します。2
 M. x piperita という学名は、M. spicata (スペアミント)と M. aquatica (ウォーターミント)の2種類の植物の交配種であるということを示しています。3
 ミントオイルを抽出するのに使用されるさまざまな種類のミントを以下に挙げます。4

 

名称 学名 主成分
ペパーミント M. piperita メントール 29〜46%
ネイティブスペアミント M. spicata カルボン 50〜70%
スコッチスペアミント M. gracilis カルボン 50〜70%
ハッカ M. arvensis メントール 70〜95%
ペニーロイヤル M. pulegium プレゴン 60〜90%
オレンジミント M. citrata 酢酸リナリル 57〜63%



 
 ミント類の主成分はメントールとプレゴンです。ハッカは、コーンミントとも呼ばれ、ペパーミントやスペアミントよりも安価なため、ミントの風味を出す際に使われたり、ペパーミントオイルを偽和するのに使われたりします。ハッカオイルはプレゴンを多く含むため、ペパーミントオイルよりも毒性が強いとされています。4
 
抽出方法
 部分的に乾燥させた M. piperita を水蒸気蒸留して抽出します。

特徴
 薄黄色または薄いオリーブ色の液体で、爽やかで強い草のようなミント系の香りがし、深いバルサム系の甘い香りを基調とし、乾くと甘くすっきりした香りになります。1
 
歴史的・伝統的使用法
 プリニウスによると、古代ギリシャ人、ローマ人は祝宴の際、ペパーミントの冠を被り、ペパーミントを料理のソースやワインの香り付けに使ったということです。3
 カルペパーはペパーミントの消化器系への働きについて熟知していたようです。
 
お腹の不調に役立つ。とくに鼓腸、嘔吐といった、ほとんどの対処法のない症状に使える。3
 ミント類は何千年も薬として使われてきましたが、ミント類のオイル自体はイギリスに蒸留技術が伝わった16世紀以降、薬用利用されるようになりました。4
 ペパーミントオイルは食品の風味付け、歯磨き粉、マウスウォッシュ、せっけん、洗剤、香水の香料成分として、幅広く利用されています。2
 
化学組成
 ペパーミントオイルの一般的な化学組成は次のとおりです。
 メントール(40.0%)、メントン(18.7%)、1,8-シネオール(7.3%)、酢酸メチル(3.8%)、メントフラン(3.0%)、イソメントン(2.5%)、リモネン(2.5%)、β-ピネン(1.8%)、α-ピネン(1.4%)、ゲルマクレン
-D(1.3%)、トランス-サビネン水和物(1.0%)、プレゴン(0.8%)4
 
作用
 鎮痛、麻酔、抗炎症、消毒、鎮痙 、収れん、駆風、頭脳明晰化、排胆、活力増進、うっ血除去、通経、去痰、解熱、強肝、神経調和、刺激、健胃、発汗促進、血管収縮、抗寄生虫
 
薬学・臨床研究
 ペパーミントオイルには催胆作用があることが確認されています。ペパーミントオイルとエッセンシャルオイルによく見られる2つの成分(リモネンと酢酸ゲラニル)をラットに投与し、胆汁の分泌を観察したところ、ペパーミントに最も強い催胆作用がありました。5
 モルヒネによって、収縮し、閉鎖されたモルモットのオッディ括約筋に対するペパーミントの作用を調査した結果、際立った鎮痙作用が見られたということです。6
 バラシュはペパーミントが細胞組織内にカルシウムイオンが流入するのを抑えることによって、拮抗作用を働かせるという内容の研究を紹介しています。7 分離したヒトの内臓に対するペパーミントの弛緩作用にはカルシウムが関連し、その作用はメントールによるということです。メントールは電位依存性チャネルにおけるカルシウムの流入を抑制するのです。7,11
 ペパーミントの鎮痙作用は臨床試験によって確認されています。ある臨床試験では、内視鏡検査の際に起きる大腸の痙攣 を抑えるのに役立つことが判明しました。8,11
 コロストミー(結腸ストーマ)の手術を受けたばかりの患者に関する臨床試験が行われ、コロストミーによる不快感がペパーミントオイルによってかなり抑えられたという結果が出ました。患者達はペパーミントオイルを含有する腸溶性のカプセルを内服しました。ペパーミントオイルが選ばれたのは、ストーマ袋の臭いを消す作用があるだけでなく、腸の平滑筋に対して効果があるからです。ペパーミントオイルは腸の圧力を抑え、泡立つのを抑制するので、手術後の痛みを緩和し、ストーマ袋の頻繁な交換を控えることができます。9 メントールは鼻の通りをよくすると言われています。鼻腔の温度受容器に刺激を与えることによって、清涼感をもたらすことと関係しているようです。10
 メントールは幼児の呼吸を妨げ、一過性の無呼吸を引き起こす可能性があります。あまり起こることではないとはいえ、ペパーミントオイルやメントールを幼児の鼻粘膜に直接塗ることは避けるべきでしょう。10,11
 臨床試験によると、ペパーミントオイルには優れた抗菌・抗真菌作用があるようです。11
 ペパーミントオイル入りのエタノールを直接塗布すると、頭痛の痛みが和らぎます。ペパーミントオイルは緊張性の頭痛の際、経口鎮痛剤に代わる、費用効率が高く、効果のある代用品として認められるということです。11
 
用途

◇ 鎮痛剤
 筋肉痛、凝り、腰痛、あざ、打ち身、関節痛、虫刺されの痛みを緩和するための塗り薬として使用されます。ペパーミントオイルの局部麻酔効果は注目に値します。筋肉痛、神経痛にお勧めのオイルです。12,13

◇ 消化器系
 消化器系に最も効果のあるエッセンシャルオイルの一つです。消化不良、吐き気、腹痛、下痢、腹部のガスを緩和します。13,14,15,16,17
 吐き気、嘔吐に効用があり、乗り物酔いに効きます。ドイツコミッションEモノグラフでは胆管の閉塞、胆嚢の炎症、重度の肝臓障害にペパーミントオイルが勧められています。12
 
◇ リンパ系
 ギュンベルによると、ペパーミントオイルは血液とリンパ液ととくに関連があり、塗ると皮膚に清涼感があるのは、リンパ系の流れをよくする効果があるためだと言っています。18 ギュンベルはペパーミントオイルの血管収縮作用は、脾臓への血流をよくし、新しい赤血球の生産に関わる脾臓の再生作用を促進するということです。18
 
 リンパ液と組織液の循環がよくなると、リンパ系の働きが活性化します。18
 
◇ 神経系
 頭をすっきりさせるので、集中できない人、精神的に疲れている人に効用があります。ペパーミントオイルは脳への血流が悪くなるのを防ぎ、循環器系のうっ血を除去し、循環をよくするので、神経を強化し、落ち着かせることができます。14,16
 頭痛や偏頭痛があるとき、ペパーミントオイルの冷湿布を額やこめかみに載せると、痛みが和らぎます。13,14,15,16
 
◇ 呼吸器系
 ペパーミントオイルは熱や頭痛を伴う風邪やインフルエンザに効用があります。風邪を退治するため、ひき始めに使用するとよいでしょう。17 鼻づまり、鼻の感染症・炎症に効用があります。13,14,15
 
◇ スキンケア
 ペパーミントはあらゆる皮膚の炎症・かゆみを緩和できますが、その場合は1%以下に希釈してください。さもないと、炎症が悪化する可能性があります。
 デーヴィスは皮膚を清浄にし、皮膚のうっ滞を散らすために、ペパーミントオイルを使った蒸気療法を行うことを勧めています。16 毛細血管を引き締め、皮膚をすっきりさせ、強くします。
 

パーソナリティ
 ワーウッドは、ペパーミントタイプは忘れ難い印象を残すと言っています。がさつで押しが強いと感じる人もいるでしょう。恐れを知らず、頭の回転が速いです。人なつっこく、他人の行く末を案じます。どんな仕事でも、ダイナミックに、全力で関わろうとします。19
 

エネルギー
 ペパーミントオイルは温め、冷やす作用があるという矛盾が見られます。多くの場合、冷却効果があるというふうに書かれています。しかし、ホームズによれば、確かに温める効果があるそうです。20
 ミルズはこの矛盾した作用について、初め、皮膚にしっかりと清涼感を与え(血管収縮作用)、後に血管を拡張し、血流を増大させるモノテルペンアルコールであるメントールによるものだと言っています。また、それに伴って(冷受容器が刺激されることなどによって)軽い麻酔効果も見られます。21
 

サトルアロマセラピー
 デーヴィスによると、ペパーミントオイルはエゴに働きかけ、うぬぼれを取り除きます。また、劣等感を乗り越えるのにもよいということです。清潔さと関係があり、倫理的な生活を送りたい人を助けます。22
 モージェイはペパーミントオイルが集中力を向上させる一方で、新しい考え方の消化を助ける面もあると言っています。また、知的・精神的な許容量を広くするエッセンシャルオイルの一種だと言っています。インスピレーションと洞察が必要な人に役立ちます。17

 
適用
 局所塗布 ̶マッサージ、湿布、入浴、軟膏、スキンケア。吸入 ̶直接吸入、ディフューザー、アロマポット、アロマライト、蒸気吸入。
 ドイツコミッションEモノグラフでは、過敏性大腸に対し、1日に0.6mlのペパーミントオイルを含有する腸溶性のカプセルを服用することが勧められています。13
 

安全性
 ペパーミントオイルには毒性・刺激性がありませんが、時折、感作反応を引き起こすことがあります。
 ドイツコミッションEモノグラフは、ペパーミントオイルを含む調合剤を乳幼児の顔、とくに鼻に塗ってはいけないとしています。12
 ペパーミントオイルを使用する際、唯一気をつけるべきことは、メントンとプレゴンの含有量が少ないものを選ぶことです。ティスランドは、ペパーミントオイルに含まれるメントン、プレゴンの量で、外用によって毒性が生じることはまずないとしながらも、経口摂取する場合は、注意すべきだと言っています。4
 

参考文献
1. Arctander S. Perfume and flavour materials of natural origin. Allured Publishing, USA, 1994.
2. Leung A, Foster S. Encyclopedia of common natural ingredients used in food, drugs and cosmetics. 2nd edn, John Wiley and Sons Inc, USA, 1996.
3. Le Strange R. A history of herbal plants. Angus and Robertson, Great Britain, 1977.
4. Tisserand R. Mint family matters. The International Journal of Aromatherapy, 1992; 4(1): 20.
5. Trabace L et al. Choleretic activity of some typical components of essential oils. Planta Med, 1992; 58:Suppl 1:a 650-51. Cited in the Aromatherapy Database, Bob Harris, Essential Oil Resource Consultants, UK, 2000.
6. Giachetti D et al. Pharmacological activity of essential oils on Oddi’s sphincter. Planta Med, 1988; 54(5): 38992. Cited in the Aromatherapy Database, Bob Harris, Essential Oil Resource Consultants, UK, 2000.
7. Balacs T. Peppermint pharmacology. The International Journal of Aromatherapy, 1992; 4(1): 22.
8. Leicester R et al. Peppermint oil to reduce colonic spasm during endoscopy. The Lancet, Oct 30 1983: 989.
9. Gallacher M et al. A sweet smell of success. Nursing Times, July 5, 1989; 85(27): 48.
10. Bruneton J. Pharmacognosy. 2nd edn. Lavoisier Publishing Inc, France, 1999.
11. Mills S, Bone K. Principles and practice of phytotherapy. Churchill Livingstone, UK, 2000.
12. Blumenthal M. et al. The complete German commission E monographs: Therapeutic guide to
herbal medicine. American Botanical Council USA, 1998.
13. Lavabre M. Aromatherapy workbook. Healing Art Press, USA, 1997.
14. Lawless J. The encyclopaedia of essential oils.
Element Books Limited, Great Britain, 1992.
15. Schnaubelt K. Medical aromatherapy. Frog Ltd, USA, 1999.
16. Davis P. Aromatherapy: An A-Z. 2nd edn. The C.W.
Daniel Company Limited, Great Britain, 1999.
17. Mojay G. Aromatherapy for healing the spirit. Hodder
and Stoughton, UK, 1996.
18. Gumbel D. Principles of holistic skin therapy with
herbal essences. Karl F Haug Publishers, Germany, 1986.
19. Worwood V. The fragrant mind. Doubleday, Great
Britain, 1995.
20. Holmes P. The energetics of western herbs Vol. I.
Artemis Press, USA, 1989.
21. Mills S. The essential book of herbal medicine. Arkana
Penguin Books, England, 1991.
22. Davis P. Subtle aromatherapy. The C.W. Daniel
Company Limited, Great Britain, 1991.__


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